17由井 4.比較        4    まとめ    目次へ
 
富士の右側 稜線は愛鷹山につながり、更に箱根伊豆と続く。
広重図の問題点: 富士の稜線は実景と違う。富士の右の稜線は愛鷹山の稜線につながり、さらに箱根伊豆とつながっている。どこまで行っても水平線がないはずなのに広重図には水平線がある。
江漢図の山裾に、海辺を通る下の道(親不知子不知道)が描かれている。現在この位置にはJR線が走っている。
江漢図では海岸に横たわる岩を上から見下ろし、写真では国道1号を走る車の屋根を見下ろしている。
岩の右側の白波が海岸線で、海岸線の位置と形は写真と一致している。明治13年国道1号線開通で海岸の岩は撤去。
江漢図は、複雑な地形を俯瞰図(超広角画法)で表現している。
広重は江漢図を見習っても複雑な地形がうまく表現できず、苦し紛れに「風景の断面図」として描いているように思える。
(もしそうなら、風景の断面図という作品は古今東西を問わず、美術史上、広重のこの1枚しかない?。)

 

江漢の写真鏡と遠近法(超広角画法)
江漢図は普通の俯瞰図ではなく、足下の風景は真上から見下ろし、徐々に俯瞰の角度を変えるという「超広角画法」。
このような遠近法は、江戸時代にはなく、世界でも珍しいが、写真鏡を使えば、高度な遠近法を知らなくても描ける
ただし、写真鏡で超広角画法の絵を描くには条件がある。風景が小型カメラに収まる程度にコンパクトでなければならない。
由井の風景は非常に雄大に見えるが、実は箱庭のようにまとまった風景で、小型カメラにすっぽり収まる。
江漢「由井」図は、サッタ峠のコンパクトな風景に写真鏡を使ったことで偶然出来上がった珍しい絵なのである。
 
ブリューゲルの絵にはこの広角画法が多いが、それ以外には西洋でもほとんど見られない。
 
ただしブリューゲルは写真鏡を使って描いたわけではなく、超広角画法をマスターしていた。アルプス越えのような雄大な風景では写真鏡は使えないし、旧約聖書を題材とした「バベルの塔」などの空想画でも当然使えない。
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