20府中   5.江漢本人の証明(共通点を探す)       5 まとめ       目次へ
「江漢図/広重図のどちらがモデルか」の議論は簡単だが、「江漢本人が描いた」という証明はなかなか難しい。
その中で、江漢「府中」には、本人であることを示す証拠が一つある。画法の共通点である。
真筆の証明の手段として、「真筆との共通点」がある。とくに江漢のように絶えず新しい画法に挑戦している画家の、しかも最晩年の作品の場合、「画風の違い」ではなく、「共通点」を探すことが重要になる。「画風を変えた」といっても、同じ人間である以上、昔の癖がどこかに出てしまうのである。
府中の森は、江漢代表作「柏原の富士」(1812)と同じ画法で描かれている。この森の表現は、江漢の他の作品にはなく、またそれ以前の日本の絵画で、誰も使っていない画法である。すなわち前年の1812年に江漢が開発したばかりの新しい画法なのである。
参考:人物描写の共通点 何気ない細部に本人のクセが出る。
   
  裸の労働者の後ろ姿        江漢の銅版画「三囲景」          笠と合羽 足の曲がり方
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