大津のまとめ            まとめ    目次へ          
異刷りの謎: 広重「大津」には山がない刷りと山がある刷りがあり、異摺りの謎とされていた。
江漢図には山(逢坂山)が描いてあり、江漢図に合わせようとして山を入れたり出したりしたもの。
     
徳力富三郎「東海道昔と今」より初刷り         画集 山ありの例                      江漢図
  
参考図(上図): 石部 金谷
広重「大津」の山は、広重五十三次の他の図に較べて山の刷りが汚い。後から無理して山を入れたものである。
最初は山がなく、後で山を入れようとして苦労したがうまく行かず、結局山をあきらめた。すなわち@山なし→A山あり→B山なし

定説の誤り: 定説では、「山があるものが初刷り、山のないものが後刷り」とされており、展覧会や画集などで山のあるものが初刷りとして展示されることが多いが、伝統的な間違いである。初刷りには山がなかった。
 
ノミ跡:  Aで山を入れるとき、ぼかし位置の目安としてノミの跡を入れた。@にはノミ跡がなくABにはノミ跡があるので、初刷り、後刷りを見分けることが出来る。(左図は広重の世界」展で初刷りとして展示されたものだが、ぼかし位置を決めるための単なる試し摺りで、「作品」とは言えない代物。)

白い三角: 屋根と屋根の間の「摺り残し」は画家の指定で、逆光に白く光る琵琶湖の湖面。山を入れると逢坂山と琵琶湖との位置関係が問題。

 

牛飼い少年(江漢図)と幼女(広重)
江漢図先頭を歩く人物は、大人の肩位の背丈で、牛の世話が仕事のカウボーイ。女物の小袖を短く切った着物、カウボーイハットに鞭一本、髪は結わずに「放ち髪」という粋な姿。室町時代、馬借、牛借という運輸業が盛んだった頃の風俗である。
江戸時代にない風俗なので、広重はお河童髪と赤い着物だけ生かして無難な三歳の幼女に改変した。
 
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