江漢図のフィクション                            目次へ
江漢図は現地の写生であり、科学者の目で見た観察なので、きわめて正確と考えられていた時期があった。
その後の調査で、正確どころではなく、実際にはあり得ない光景を故意に描き込んである部分がいくつもあることが分かってきた。
「きわめて正確に描かれた風景と、実際にはあり得ない故意のフィクションの合成」という画面もある。
「真景」の立場から、広重が江漢のフィクションを修正している箇所も見られる。
以下、江漢のフィクションの例を示す。
   
日本橋 南蛮えりを付けた武士
信長/秀吉時代の風俗である。
 日本橋 インドネシア人
インドネシア人は長崎出島から出られなかったはず。
   
箱根 塔ヶ島
写真鏡による正確な風景の上に、地図の塔ヶ島の形をを合成している。

東海道分間絵図(元禄四)
   
興津 岩山の高さ
風景は正確で実在するが、人物と比較して山の高さが10m以下に見える。実際は80mくらいの岩山。
同じような例が「蒲原」の丘にもある。
   
荒井 二艘舟
大名船を二艘連結して宴会をやっている場面だが、大名船(船室や手すりがあり、全体がそりかえっている。)の連結は無理。
山車を運ぶために小舟を二艘連結する津島祭りの図{東海道名所図会)から発想した江漢のフィクションであろう。

津島祭りの図{東海道名所図会)
   
大津 牛飼い少年
室町時代、この地方で馬借(運送業)が盛んだったころの風俗。粋な衣装の少年カウボーイ。
   
坂の下(筆捨山) 実在しない滝 しかも「水源の川」が描いてあるのは滝の図として異例。
筆捨山のモデルは東海道名所図会だが、江漢の西遊旅潭にも本人の写生図があり、いずれのモデルにも滝はない。
西遊旅潭の同じページ「虎渓山」の滝がある。虎渓山で岩の頂きから落ちる滝の水源を確かめた思い出を描きこんだらしい?

  西遊旅潭:虎渓山 「堂前の池に飛泉(タキ)岩上より落る」

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