岡部  目次へ
広重五十三次「岡部」−副タイトル「宇津之山」
よく言われるような「宇津之谷峠」の風景ではない。人は(道は)峠を越えられるが、
水流は峠を越すことが出来ない。
広重図のモデルとされる江漢画集「岡部」
広重が「宇津之山」という副題を付けたのは写生場所を知らなかった証拠。
そのために研究者も長い間「宇津の谷峠」の山道風景と思いこんで取材していた。「大正の写真集」でも宇津の谷トンネルを写している。
広重の写生場所について3つの説がある。
(1)宇津の谷峠の山中の風景  
(2)宇津の谷峠から平地に下りてきた坂下付近の眺め。 この場合は水流は手前から向こうへ流れている。(吉田漱氏)
     「ただしこれだけの大量の水が流れているのは、平地に下りてしばらく歩いてからの風景(森川昭氏)」
(3)岡部から峠方向を望む。 背景は宇津の谷峠の山々。 (児玉幸多氏)
(八幡義生氏) (2)とは逆方向の眺め。

カシミールや現地写真との比較で、江漢図の背景の山は明らかに宇津の谷峠の山だから、(3)が正しかったことになる。

カシミールの機能の一つ
地図の陰影を強調して、立体感を出すことで、地形が一目で分かる。

山と山の間に極端に狭い隘路が一箇所だけあり、道と川の流れが貫通している。(岡部橋付近のカーブ)

「大旅籠柏屋」歴史資料館 (専用駐車場あり)
から150m−岡部橋の風景

岡部橋付近から宇津の谷峠方面を望むカシミール図
広重は江漢図をコピーしただけ。山の形が崩れている。
  山あいを通してみた背景の険しい山々の輪郭、山襞、地形は江漢図とそっくりである。
現地写真(岡部橋付近)
江漢図は山襞の細かい点まで現地風景と一致している。
画面の外、左側には新しい水路と国道が出来ているが、
ガードレールの右の山裾には旧水路が残っている。
樹木まで含めて、当時の風景がそっくり残されている珍しい場所。

新しい水路が出来るまでは、この旧水路に全部の水が集まり、江漢図や
  広重図のように大量の水が流れていたのであろう。

岡部橋付近の地形変化: 左側の山が10m削られて車道と新水路が出来ている。右側はほとんどそのまま。

目次へ   岡部宿ガイドへ

inserted by FC2 system