広重双六  東海道富士見双六(神奈川県立博物館) 広重画 和泉屋版   目次へ
広重自身による東海道五十三次双六が、保永堂版発売直後に、他の版元から出版されている。
広重の元に届けられたはずの「最初の初刷りの一枚」が、広重の手元に保存され、それをモデルにそのまま深く考ええずに描き写したものであろうと思われる。
大津や池鯉鮒の初刻論争の有力な手がかりである。
 川崎: 初刻の図柄である。  品川: 初刻の図柄である。 戸塚:板壁(再刻版)−馬からおりる(初刻)
 小田原: 初刻の山。  池鯉鮒: クジラ山がない。  大津: 逢坂山がない。
以上から、二つの知見が得られる。
(1)戸塚だけが初刻と再刻版の中間の図柄。戸塚の茶屋の板壁を見落としたのは広重のミスであり、本人もミスを自覚していた。
   一方、小田原の箱根山のミスは、言われたとおり描いただけのものなので、広重は責任を感じていない。
(2)大津と池鯉鮒は、山がないのが初刷りである。山は広重が描いたものではなく、あとで保永堂が勝手に入れたもの。
 
版画家である徳力富吉郎氏が、地方まで探し歩いて選んだ初摺りシリーズ「東海道昔と今」(保育社)には山がない。
山があるとかないとかの「知識」で選んだものではなく、版画家の目で「摺りの状態」から選んだ初刻シリーズ。
神奈川−姥島がある珍品 大津−逢坂山がない。 池鯉鮒−クジラ山がない。

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