マハーカーラ・シヴァ・青面金剛                       写真集目次へ   マハーカーラ続き
青面金剛とヒンズー教のシヴァ神には共通点が多い。 髪に隠れたヘビ、額の「第3の目」、三叉戟・・・
  
   儀軌型の青面金剛の持ち物である「ヘビの巻きついた棒」は、シヴァのリンガから来たもので、下図のようにヘビが巻き付いている。

リンガは男根信仰、巻き付いたヘビは子宮を表す。
 
共通点が多いからと言って「青面金剛の起源はシヴァ」と考えるのは早計である。※
仏教では、ヒンズー教のシヴァに対抗するために、シヴァの姿をそっくり真似て、マハーカーラという神(仏教の大将軍)を創った。
そのマハーカーラが、様々な経過を経て青面金剛のモデルとなった。
マハーカーラは、中国/日本では明王に進化するが、チベット/蒙古では、マハーカーラのまま残って、様々な姿に展開する。
  
 マハーカーラのポーズのモデルになったシヴァ神       チベット寺院のマハーカーラ        降三世明王(円仁様式) 京都醍醐寺
かって「不動明王はシヴァである」という説が唱えられ、まじめに大議論されたことがあるが、「不動明王=シヴァ」説は基本的に間違いである。
ヒンズー教のシヴァの姿を真似て、シヴァの対抗馬である仏教の大将軍マハーカーラが創られ、そのマハーカーラが不動明王に進化した。姿が似ているのは当然だが、
シヴァのデザインを借りただけであり、それだけで判断してはならない。
 
75種類あるというチベットのマハーカーラの例 
シヴァ夫妻などヒンズー教の神を踏むことで仏教の神であることを示している。
  
  
太鼓を持つシヴァを踏む                シヴァ夫妻 シヴァ妃は夫を踏む足を持ち上げようとしている。     赤裸にされたシヴァ。

参考図:  征伐されるシヴァとシヴァ妃。シヴァ妃は髪をつかんで引き倒され、シヴァはふんどし姿にされている。
中国/日本では、マハーカーラが明王に発展したため、マハーカーラは名前だけ残って、その本来の役割が分からなくなった。
   
  白牛はシヴァの乗り物。シヴァの居るところには必ず白牛が居る。
上左図は、仏教の大将軍であるマハーカーラ宿敵ヒンズー教のシヴァ神を打ち倒した図であることは明らかである。
例示したように、マハーカーラはシヴァを倒す姿で表現されるものであり、また、ふんどし姿の人物がシヴァであることが白牛で説明されている。
ところが仏典ではすべて、白牛ではなくとされ、マハーカーラが征伐しているのは墓場で死肉をあさる茶吉尼天とされている。
すなわち、宿敵シヴァを征伐する仏教の大将軍が、墓場荒らしを取り締まるガードマンに成り下がっている。
中国/日本では牛は黒いものであり、角の生えた白い動物としては羊か山羊しか思い浮かべなかったのであろう。
「白牛→羊」の間違いが何時から起きたのか
空海が密教を日本に持ち帰った時期に中国で刊行された仏教語辞典「
慧琳音義」では、すでにとされている。
更に調べたところ、密教の原典である大日経疏でも羊とされていることが分かった。唐の玄宗皇帝の時代密教がインドから中国に持ち込まれた第1歩のところで、マハーカーラは誤解され、千数百年そのままになっているのである。

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