日月捧持型青面金剛                                目次に戻る
江戸時代最高の物知りと言われる天野信景の「塩尻」巻之四十六に次の一節がある。

「今、青面金剛の頭に猿を作る。我国の作意也。本は髑髏を抱かしめる像なり。六字明王も青面にして猿の頭を頂き三面六臂也.これを取りたがえたるにやと密家の僧のいえり。」
これまで「庚申の日月」の起源かどうかは別にして、日月奉持型青面金剛のオリジンではないかとは考えていたが、「六字明王」はもともと正体がよく分からない仏像で、庚申との関係はまったく不明であった。

最近になって、六字明王の姿のモデルは別尊雑記の妙見菩薩であることが分かった。
両手で日月を奉持していることの他に、左足一本で立つという特異なポーズが両者共通であり、他の仏像にそういう例がない。「仏画の見方、仏像の見分け方」という本にも六字明王の姿は妙見菩薩から採ったものであろうと書いてある。
妙見菩薩は北斗星の化身であり、庚申との関係は明確で、あらためて説明する必要はない。したがって日月奉持型青面金剛の姿は妙見菩薩から来たものと一応考えて良いであろう。

妙見菩薩の図像では両手に持つ日月の他に、数個の日月に取り囲まれている。
庚申塔や庚申掛け軸の「日月」のオリジンの可能性もある。

日精摩尼(摩尼は宝珠の意味)には「三本足の烏」が描かれ、月精摩尼には「兎と薬草」が描かれている。「兎の餅搗き」ではなく、「兎が薬を作っている」という伝説らしいが、もう一匹の動物(ねずみ?)の意味はよく分からない。
蛇行する竜の背中で、サーフィンのようにバランスを取るために片足で立っているかのように描かれたのであろう。
妙見菩薩(竜の背中に乗る)            六字明王
日月奉持型青面金剛 妙見菩薩(別尊雑記)と六字明王 どちらも日月を持ち、片足で立つ。

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