共通点                        議論小目次へ     総目次へ
江漢作品群と江漢画集の共通点がない」ことがニセモノ説の主要な根拠になっているので調査した。    
正直に言って共通点が非常に少ない。(理由は後で分かる) そのことが江漢問題がこじれた原因の一つである。
共通点が少ないことは「両刃の剣」で、実はニセモノ説にとっても具合が悪い。「ホンモノとまるで似ていないニセモノ」が一体世の中にあるものだろうか。ニセモノはホンモノに似せて作るのが常識なのではないのか。
いくつかの共通点を以下に示す。同一人物である以上、画法を変えても、よく探せば共通点が見つかるのである。
江漢画集 「由井」 江漢真筆 「大峰覗き岩図」
全体の風景の構図および二人の旅人と一人の案内人がおそるおそる谷底を覗き込む情景はそっくりである。
岩峰の岩肌や植物(松、灌木、ツタ)の描き方も、水墨画と洋画の違いを考慮すればよく似ていると見てよいであろう。
1815頃「西遊日記」の挿し絵(真筆)

富士山の縞模様の描き方に共通点はないか

 

江漢画集 「府中」1813? 江漢真筆 「駿州柏原冨士図」 1812京都にて
2枚の絵の森の大きさを揃えて並べて見ると、森の形や描き方が完全に一致することが分かる。
こういう画法で森を表現した画家は日本にいなかった。江漢作品群の中でもこの1枚だけである。

 

人物比較
人物が下手だから江漢画集はニセモノ」といとも簡単に断定した人がいた。
どうも広重画集と江漢五十三次との比較で言っているらしい。江漢真筆と江漢画集の比較でなければ意味がないと思うので、反論のために人物比較を行った。

あくまでも「江漢真筆と較べて下手とは言えない」と言うための資料であるが、「江漢真筆とよく似ている」と言えなくもないと思うのでそのまま示しておく。    ○江漢真筆  △江漢画集
裸の男性労働者の後ろ姿      雨合羽の人物−膝の曲げ方まで似ている
       △府中                       ○
     △蒲原           ○
     ○             △戸塚

小腰をかがめる茶屋の女性。
腰回りの太さの違いが気になるが、下欄のように、江漢の女性の腰回りはピンキリである。
                      △藤枝

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やくざ風の男の着物の着こなし。首の後ろの襟口が極端に広いのが特徴。
人体バランスがあまり上手くないのも江漢の特徴。
着物姿の女性なら何とかなるが、裾をまくった男ではごまかしが効かない。
   
江漢真筆の人物
江漢は、本来人物デッサンは得意ではない。「人物が下手だからニセモノ」は軽率な結論。
5等身の人物。子供に見えるが実は大人の漁師   10等身以上の人物

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